2018/03/23

豊洲市場・施行令88条地震力算出の瑕疵疑惑

(1)疑惑の概要

豊洲市場に関して設計会社が作成した構造計算書では、基礎杭にかかる地震力(せん断力)は以下のように計算されています。
基礎杭にかかる地震力=(2階〜5階の建築重量合計)x0.2+基礎梁層重量x0.1
          =419,109kN+232,708kN
          =651,817kN
この式において、基礎梁層重量x【0.1】が過小評価でないかとの瑕疵疑惑が今回の問題です。

水平震度(せん断力係数)が0.2になれば、
基礎杭にかかる地震力=419,109kN+465,416kN
          =884,525kN

これが正しいとすれば、杭にかかる地震力は35.7%の増加になり、すべての基礎杭で検定比が1.00を越える可能性があります。



(2)建築基準法施行令第88条における「地震力」とは、以下に示す通りです。

1)建築物の地上部分の地震力については、当該建築物の各部分の高さに応じ、当該高さの部分が支える部分に作用する全体の地震力として計算するものとし、その数値は、当該部分の固定荷重と積載荷重との和に当該高さにおける地震層せん断力係数を乗じて計算しなければならない。この場合において、地震層せん断力係数は、次の式によつて計算するものとする。

Ci=ZRtAiCo

Ci 建築物の地上部分の一定の高さにおける地震層せん断力係数
Z  その地方における過去の地震の記録に基づく震害の程度及び地震活動の
状況その他地震の性状に応じて1.0から0.7までの範囲内において国土交通大臣
が定める数値

Rt 建築物の振動特性を表すものとして、建築物の弾性域における固有周期
及び地盤の種類に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値

Ai 建築物の振動特性に応じて地震層せん断力係数の建築物の高さ方向の分
布を表すものとして国土交通大臣が定める方法により算出した数値

Co 標準せん断力係数

2)標準せん断力係数は、0.2以上としなければならない。(以下省略)
3)省略

4)建築物の地下部分の各部分に作用する地震力は、当該部分の固定荷重と積載荷重との和に次の式に適合する水平震度を乗じて計算しなければならない。ただし、地震時における建築物の振動の性状を適切に評価して計算をすることができる場合においては、当該計算によることができる。

k≧0.1(1-H÷40)×Z
k 水平震度
H 建築物の地下部分の各部分の地盤面からの深さ(20を超えるときは20と
する。)(単位 m)
Z 第1項に規定するZの数値) 

(出典)http://best.life.coocan.jp/k-rei/rei03/08/02/rei_088.html



(3)設計会社および森高元PT委員の主張

第2回市場問題PT検討会議において、設計会社が水平震度0.1を採用した理由の要旨は以下の通りです。

「基礎ピット部は高さ5mのうち4m(4/5)が地中に埋まっており、法令上地上とみなせません(地下である)。また土による拘束効果は前提としていません。」
(出典)設計会社提出資料図28頁
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/shijyoupt02/04_1nikkennshiryou.pdf

また第3回PTにおいて森高委員は以下の論旨で主張されました。
「75%以上が土壌と接触しており地下とみなしてよく、水平震度0.1で合理的である」
(出典)第3回PT議事録
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/shijyoupt-kaigi03rokuga.html

上記の論旨は、基礎梁層は地階と見て建築基準法施行令88条第4項の適用が可能とのご主張です。

しかしながら、設計会社提出資料の28頁でもわかるように、4mの土に接しているのは構造的には別物である擁壁の外部であって、建物本体に対しては土に変わるものとして拘束出来る物体はポリスチレン板と基礎柱の外面しかありません。空気では拘束出来ません。「建築物の構造関係技術基準解説書」のP.297(建築基準法施行令第88条)にも解説があるとおり、75%以上として算入するのは「地盤・土壌に接する部分」です。空気やすきまを持って設置された他人の構造物(擁壁)は含まれていません。土壌との接触面積を精査すると、多めに算定しても53%しかありません。
(構造設計士の高野氏の見解を活用させていただいております)


(4)土壌との接触面積の精査

そこで、基礎梁層の側面図(断面)及び平面図(断面)を用いて、正確に土壌の接触面積比率を求めてみました。
(番号は図面上での部位番号とも一致)


①外縁部
周長方向比:100%土壌接触、深さ方向比:5m中0.25m
土壌接触率=100%x0.25/5.0=5%

②基礎柱の外面
周長方向比:3.6m/12m、深さ方向比:5m中3.7m
土壌接触率=3.6/12 x 3.7/5.0 =22%

③基礎梁張り出し部端面
上記②ですでに集計済み

④発泡ポリスチレン
厳しく見ると、
周長方向比:(12-3.6)/12、深さ方向比:0.5m/5.0m
土壌接触率=8.4/12 x 0.5/5.0=7%

100歩譲歩して、50cm幅のポリスチレン板の圧壊で基礎梁下端まで拘束
されると見ると
周長方向比:(12-3.6)/12、深さ方向比:1.85m/5.0m
土壌接触率=8.4/12 x 1.85/5.0=26%

土壌接触率①〜④合計は、
厳しく見ると、34%
譲歩して見ても53%



(5)結論

よって森高委員が主張された「土壌接触は75%以上」は成立せず、設計会社の「5mの内4mが埋まっているから」という説明も、明らかに成立しません。以上より「形式において」まず地下の要件を満たさないと考えらます。

従って水平震度0.1の使用は、施行令88条地震力の算出瑕疵と考えられ、水平震度0.2を使用して再度構造計算(杭の検定)をやりなおすべきではないでしょうか。

なお、この建築物の構造計算は「上部構造」と「基礎+杭」の2部に分けて実行されておりますが、「上部構造」に関しては再計算の必要性がなく、「基礎+杭」の部分の再計算でことが足りると思います。
(高野氏の見解を活用させていただいてます)


(6)他にも疑惑あり

なお豊洲市場の建築物には、「土壌汚染対策で後から追加された地下ピットのコンクリート床が構造計算に加味されていない?」という別の疑惑もくすぶっています。
以下のUPLに別途記載します。

【豊洲市場耐震疑惑】<追加土間コンの水平地震力が杭に悪影響?> http://kimikodover.blogspot.jp/2018/03/blog-post.html

豊洲市場・追加床工事に関するJSCAさんへの質問書
http://kimikodover.blogspot.jp/2018/03/jsca.html

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180324 (4)の土壌接触面積率の合計54%を53%に修正

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